2018.03.06
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「障がい者の特性に着目した仕事づくり研修」を受講してきました!
2018年3月5日 障がい者の特性に着目した仕事づくり研修
平成29年度独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業
主催:特定非営利活動法人ディーセントワーク・ラボ
基調講演「障がい者雇用の経済学」 慶應義塾大学 中島隆信教授
【講演の目的】
障がい者福祉/雇用の現状を評価し、問題点を見いだし、解決策を探る
日本の障がい者福祉の評価
・支援費制度→障害者自立支援法→障害者権利条約批准→障害者総合支援法→障害者差別解消法
・法定雇用率1.5%→2.2%
・特別支援学校120校増設、障がい者施設倍増、特例子会社250社増加(06年~16年)
コスト意識の問題
事例:就労継続支援A型(黒字であるが給付金がなければ赤字の場合)
給付費収入は社会的には費用である
利用者工賃は社会的には収益である
この考え方が大切。
事例:サムハル(スウェーデン)
従業員給与の方が、補助金収入よりも高くなっている
社会会計上、1割の利益が出るように仕組み化している
(その背景には、補助金は従業員給与の9割までしか出さないというルール)
障がい者を戦力としたビジネス意識を持つことが大切。
バリアフリー
配慮のコストを誰がどれくらいしているのかを考える必要がある。
事例:階段昇降機
階段昇降機の多くは、既存の階段の半分をなくして昇降機を設置している。
一見、バリアフリーではあるが…
もし通勤ラッシュの際にそれを使用した場合、どうなるか?
→周りからの冷たい目があるので結果として使用しづらくなる。
障がいのある方の精神的負担も考慮して設計する必要がある。
厚生労働省の政策上の矛盾
・企業は障がい者雇用を増やせ
・就労継続支援B型の工賃を上げろ
結果として、優秀な障がい者の取り合いになる
その対策には、障がい者を増やすしかない?のではないか。
実際に、特別支援学校増設するケースや、ちょっとでも障がいの疑いがあれば(障がい者雇用枠で就職できるから親が勧めることもあり)障がい者の認定をもらうケースが東京で起きている。
障がい者雇用について
平成13年頃で障がい者雇用が一番多かったのは、従業員50人程度の小規模企業だった。
当時は、大企業の雇用はほとんどなかった。しかし、現在は大企業の雇用がほとんどになった。その背景に特例子会社の制度がある。
特例子会社の仕組み
仕事切り出し型
各グループ会社の不要な仕事を集めて、それ専用の特例子会社をつくって仕事をしてもらう。
例:間接業務(清掃・シュレッダー・メール分別)
内部取り組み型
アウトソーシングしていた仕事を内部で特例子会社をつくって解決する。設備投資がかかるので資金力がある会社ができる。
例:クリーニング(ランドリーを内部で作る)
雇用納付金制度はサスティナブルではない
現状の制度では、法定雇用率未達成企業が達成企業に対して納付金を支払うもの。しかし、厚労省が未達成企業に達成するようにプレッシャーをかけるため、達成企業が増えおり、入るお金よりも出るお金の方が増えている。その結果、法定雇用率を上げて未達成企業を増やすというサイクル。
中島教授の仮説:日本全体で働きたいと思う人の割合と障がいのある方で働きたいと思う人の割合が一緒であるべき。計算すると法定雇用率4.4%が着地点。
そこまでこの制度で引き上げていくのが良いか…? 本質とずれた障がい者雇用が増えているのも現状。
人口が減っていくことが重要な課題
子どもの数が5分の1になっており、必然的に日本の人口が2400万人程度になる社会に向かっている。
障がい者雇用の問題解決の方向性
・排除の論理は通用しない(スウェーデンは1000万人程度の国でもできている)
・弱者を作らない比較優位(相対的に得意なことに特化し、あとで生産物を交換すれば問題ない)貿易の理論を応用:魚の生産と肉の生産
・配慮はどんな人にも必要
中島教授の提案:企業がA型事業所に仕事を発注すると障がい者雇用(みなし雇用)として認める制度をつくるのはどうか?
その際は、大企業に関しては雇用義務を設けたままで、中小企業に関してはみなし雇用でOKという制度。みなし雇用をする中で、良い人材がいたらそこで雇用すれば良い。
質疑応答
質問:「実際、重度の障がいのある方の仕事ってどうすれば?」
回答:比較優位の視点は一般論で、個人的に話すと下記が大事かなと
・早い段階から仕事の選択肢を出す
・何が楽しいのか(何がしたいのか)
第二部 障がい者雇用におけるマネジメント
株式会社障がい者つくし更生会 専務取締役 那波和夫さん
昭和59年3月設立
資本金2200万円(資本構成 個人のみ)
株主配当金をいらないという株主
→毎年株主総会で「良かったこと」を伝えて共感してもらう
「障がい者が自ら雇用の場を創造・開拓し、以って障がい者の自立更生を図る」
社員:37名(内32名が障がい者)(平均年齢:50歳)最年少で32歳 定年退職65歳
知的5名、精神8名(統合失調症、転換、幻聴、発達)、聴覚4名、上肢4名、下肢11名(内重度6名)※シルバー人材センター 16名
→社内では障がい者という言葉は使わない(自然と)
障がい者雇用率:86.5%(重度はダブルポイントなので実質102.7%)
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力(稲盛和夫さん)
使命:「障がいがあっても、物心両面の環境が整えば、一人前の仕事ができる。障がい者と健常者は一体となれる。それを証明し、伝えること。」
ビジネスがどうやって成り立つか?→そのために社員をどのように育てるか。
福祉の専門知識はない。→しかし福祉の方からは合理的配慮ができていますねと言われる。
ここ1年で481名 見学に来られた。→社員が自ら自分の仕事のことを説明できる。
外部から見た会社の特徴
・不燃性一般廃棄物中間処理施設の運転・管理で全国トップレベル
・障がい者雇用率が高い組織構成(全国トップレベル)
・株式会社としてビジネスが成立している(補助金・給付金等なし)雇用率達成による報奨金はある
・社員(障がい者・健常者)が成長している
・社員がイキイキと仕事をしている(やらされているように見えない)
・社員全員が「この会社に入って良かった」と言える
・定着率100%(会社を辞めたいと言う社員はいない)
よくある質問
Q:障がい者だけでチームを構成している班もあることで、なぜ支援者がいなくてもできるのですか?
A:どうして支援者がいないと雇用できないと思うのですか?
Q:なぜ同じタイプの障がい者を雇用しないのですか?
A:同じタイプの障がい者を集めるとできるところが似ているので、できないことも似ていく。結果として、同じタイプの障がい者ばかり集めて雇用するのは管理しやすい人の都合ではないか。スタンスとして、異なる障がい者の配置の際に起こるトラブルを待っている(隠れたことを対処できる力量がない)。トラブルが起きることで対処をする。対処の仕方として、果たしてこれは障がいの特性か?それとも本人の問題か?と本人に確認する。個性をみていき、対策をしていくことで、自己理解と他者理解のチャンスがある。
管理者の価値観で決めつけていないか?
事例:信号を塗ろう
みなさんが、思い浮かべる信号は、「青・黄・赤」ですよね?もし子どもが、「黒・黒・赤」とこのように塗ってきたらどのように声をかけますか?「違うじゃないか!」と怒鳴りますか?
ここで自分から説明できる方や、一言「なぜこのように塗ったの?」と聞けるなら良いのですが、もし「違うじゃないか」と怒鳴ってしまったら、子どもは二度とその人の言うことを聞きたいと思わなくなるのではないか。実際には、信号は赤青黄が同時に点灯しないので黒黒赤は正解です。
Q:「安全教育はどのようにしているのか?」
A:前提として、この業界は労災がとても多い業界。人間関係が答え。正しいやり方を覚えよう(ミスをするなではない)。体験をする中で難しいときやミスがあったときに初めて具体的に説明することで、経験したことなのでより吸収が早くなる。
【人間関係】
売上–コスト=利益
〈コストの要因とは?〉
①金銭の要因
②時間の要因(機会追求・現状維持・問題解決)
③労力の要因
④心理的な要因(仕事の目的を理解・納得・信用)
Q:人事評価制度について
A:人事評価をつくれない(個人を見ていくしかない)誰がいくらもらっているか伝えていない。
第三部 障がい者が働ける柔軟な組織の要素と強いチームづくり
NPO法人ディーセントワーク・ラボ 中尾代表
アンケート結果からわかったこと
特例子会社の現状
・親会社の経済的支援がないと成り立たないところがほとんど
・特例子会社をつくる上でほとんどが親会社の関与がある
・特例子会社がチームで働いていない傾向が高い
結果として、個々の担当の人との関わりが密であることが予想される
各雇用パターンで求められているものの違い
【企業・特例子会社】主体的に働く場
・サポートを受け、失敗を乗り越えながら成長できる環境づくり
・チームで進める障がい者雇用
・障がい者が主体的に働けるような取り組み
【A型事業所】サポートを受けながら主体的に働く場
・安心安全な環境下で、障がい者が成長し主体的に仕事ができる環境づくり
・チームで進める障がい者就労
・障がい者同士がポジティブに関われている状態
【B型事業所】居場所・仕事の場
・居場所と感じられる、自分に自信が持てるような職場づくり
・チームで進める障がい者就労
・自主的にやる気を持って仕事ができるような取り組み
・障がい者同士がポジティブに関われている状態
障がい者の就労・雇用が上手くいっている組織の特徴
①個々の特性・強みを、のりしろも含めて最大限まで引き出している(適材適所に配置)
②他者からの承認を通じて、モチベーションが高まり、個々のさらなる成長意欲を引き出す
③チームの中の個人を大切にして、チームで仕事をしている。
④常に挑戦をし、多くの失敗と小さな成功を積み重ねている。失敗は成功の素。あきらめない。プロセスをたどることを組織の強みとする
⑤組織全体としてあそびがあり、何かが起こっても臨機応変に対応する
⑥個々の成長にも焦点を当て、自己へのよい気づきがあるように取り組んだり、フィードバックしたりしている。
人間の欲求 アルガーハのERG理論
成長欲求
関係欲求
存在欲求
〈モチベーションを高めるための3つ〉
・目標
・サポート
・フィードバック
本人↔︎他者↔︎本人
障がいのある方にとって働きたい職場とは、障がいがない人にとっても働きやすい職場
プラスに働く、本人らしさが生きる情報を集める
・得意なこと(人の顔を覚えるのが得意、数字を覚えるのが得意、手先が器用)
・得意な時間(朝・昼・夕方)
・本人が目標としていることは何か?
・それを達成するためにどうするか?
・どうすると休めるか?(コーヒーを飲む、飴を食べる)
・不安、パニックになったとき(どういう場所が落ち着くか、どういう声かけをすると落ち着くか)
・リカバリーの方法(好きな音楽を聴く、好きなアイドル写真を見る)
・苦手なこと、されると嫌なこと
・不安になった時に起こす行動(叫ぶ、歩き回る、帰る)
第四部 障がい者の自己決定を取り巻く環境
船谷博生さん(公務員、パナソニックを経て起業)
株式会社テミル 社長
障がい者のお菓子作りと販売
なぜお菓子か?その答えは、働きがいを得やすいためである。しかし、当時はお菓子作りの中心に障がい者ではなく支援者がいた。
ディグニティ オブ リスク、リスクを負う尊厳(リスクを持つのも権利)。失敗があるから成功がある。しかし、親御さんが受けている差別の現状を知ったときに、失敗なんてさせられないと感じた。
差別に関する調査の実施
大阪手をつなぐ育成会の協力のもと、障がい者の親2000人に対して118項目のアンケート調査(回収率13%)
・親役割尺度により、特徴的傾向を探る
・誰から差別を受けたと感じているか
・差別は子育てに影響したと感じているか
回答者について
回答の89%が知的障がいの親。また、お子さんが通われている事業所の種別は、B型事業所43%、生活介護24%、A型事業所13.8%、民間企業13.4%であった。
Q:賃金は妥当か?
A:半々
ステージ理論段階説
創始→普及→統制→統合→構築→成熟
Q:子育ての過程で自分自身への「差別/偏見」を感じた
A:当てはまる、やや当てはまるが63.9%。特に、配偶者の親からの差別偏見が多かった。
詳しくは、株式会社テミルへ。
株式会社NSP キングコング(焼肉屋)
障がい者雇用の事例紹介:仲地宗幸さん http://nsp.okinawa.jp/
沖縄市泡瀬
創業23年目 7年前に就労継続支援A型へ、昨年A型をやめて全雇用にした
従業員:12名(内7名が障がい者:フルタイム2名)
5年間で離職は2人
給付金や助成金を受けずに黒字を保っている
構造化、時間割の工夫(ノート)→コメントや一言フィードバックをする(ノートを見てもらえない場合はイラストやデザインで気を引く仕組みもとっている)
事例:一人でぶつぶつ言ってしまう統合失調症の男性
フルーツの飾り切りの客前調理の際に、フルーツと喋れるフルーツ職人というポップを置いた。
事例:触覚過敏の自閉症スペクトラム男性
寿司屋さんに就職したが、冷凍食品のポーションを測って小分けにする仕事をしたが、メモリをきっちり合わせるまで進まない特性があり、作業効率が悪かった。本人の意向で、寿司を握りたいとのことだったのでシャリを触ったら、触覚が気持ち悪くて逃げ出してしまった。その後、いろいろな取り組みをして、最後にダメ元で使い捨て手袋をつけると3時間でシャリを11gで握れるようになり、すぐに握りもできるようになった。寿司職人となり、今では重要な戦力として働いている。
合同会社ソルファコミュニティ
障がい者雇用事例紹介:代表 玉城 卓(すぐる) http://solfa.biz/
沖縄県
就労支援A型
全Aネットの沖縄窓口
農福連携 沖縄のブロックリーダー
大事にしていること
とにかく「楽しく」仕事をすること。
専門性のない「専門性」。
現状より、「一歩」前にでよう。
農業は基本的に一人の仕事。今以上のことをしたいと思っても常に人手不足で困っている。
仕事を探している福祉と連携することで双方の課題が解決できる。
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 支援センターさくら
障がい者雇用事例紹介:平澤さん http://www.osaka-ikuseikai.or.jp/center/sakura.html
スワンカフェベーカリー大東店
→クロネコヤマトの財団と立ち上げた株式会社スワンという会社(本店は銀座)直営4店 FC22店
→タカキベーカリーと業務提携して冷凍のパンを仕入れてヤマトが運送
ADHDの女性が、お客様の声や店内のBGMなどが気になり、洗い場に入った際に気が散ってお皿を割ってしまう。彼女の良いところを伸ばす方法を考えた時に、店頭販売を行った。その結果、毎回5000円の売上を上げてくれている。「周りに気が散ってしまう」を「周りをよく見える」に変えることで、戦力となった。facebookページへいいね!してね。